Column税務コラム

「インボイス制度」への対応はできていますか?

令和5年10月1日より消費税の「インボイス制度」が開始されます。これに先立って、適格請求書発行事業者の登録申請が行われていますが、令和4年8月末現在で登録見込数の50%程度の事業者がその手続きを行っているというのが現状だそうです。
さて、「インボイス制度」が開始されると、今までと何が変わるのでしょうか?

適格請求書等を保存する方式(インボイス制度)

消費税の納税義務者が消費税の申告をする際は、課税売上に係る消費税額から仕入税額控除を行って消費税額の計算を行いますが、この仕入税額控除の適用を受けるための要件の一つとして、請求書等の保存があります。
現在では、区分記載請求書等を保存する必要がありますが、令和5年10月1日からは適格請求書等を保存する方式(インボイス制度)へ変更されます。この適格請求書等は事業者の誰もが発行できるわけではなく、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者のみが発行することができます。
この登録は消費税の課税事業者が受けることができ、今まで消費税の納税を免除されていた事業者が登録を受けると、課税事業者として消費税の申告をすることが必要となります。
この適格請求書を令和5年10月1日から発行できるようにするためには、原則として令和5年3月31日までに登録申請手続を行う必要があります。

次に、「インボイス制度」が開始されるまでにすべき事項を考えてみましょう。

商品等の販売やサービスの提供をする側(売手)の準備

・売上先がどのような方々なのか確認する。消費者・免税事業者・簡易課税を選択している事業者
  は適格請求書を必要としません。

・売上先(雑収入等で消費税課税となる取引の相手先も含む)から適格請求書を求められるのか、
  また、どのような形で提供するか、検討する。

・適格請求書は、記載事項や税額の表示方法が定められており、現在使用している請求書等をどの
  ように変更するか、新しく作成するのか、システムの見直しやソフトウエアの変更導入等も含め
  て検討する。

・適格請求書を交付した場合の写しは、交付した課税期間の終了した日の翌日から7年2ヶ月保管
  する必要があり、その保管する書類の種類や方法等も検討する必要がある。

商品等の購入やサービスの提供を受ける側(買手)の準備

・仕入れや経費について、適格請求書を受取る必要がある取引かどうかを検討する必要がある。適
  格請求書の保存が不要となる特例(3万円未満の公共交通機関への運賃など)も定められてい
  る。

・受取る適格請求書の記載事項の確認方法、保存の方法等を検討する必要がある。

・例えば、事業所家賃を毎月振込で支払う場合などで請求書や領収書が発行されないケースでは、
  どのようにすれば仕入税額控除の要件を満たすのかを検討し、相手先とも協議する必要がある。

・適格請求書が発行されない課税仕入でも、経過措置の適用で一定金額(※)は仕入税額控除が行
  えるので、明確に区別しておく必要があり、その方法を検討(会計ソフトの更新等)する必要が
  ある。

・消費税の簡易課税制度を選択できる事業者は、その選択を検討する。なお、簡易課税制度を選択
  している事業者は、仕入税額控除のための適格請求書の保存は不要。

(※)仕入税額控除の経過措置
適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れであっても、一定の要件を満たせば仕入税額相当額に下記の割合を乗じた金額を仕入税額とみなして控除ができる。
期間 令和5年10月1日から令和8年9月30日まで  割合 80%
期間 令和8年10月1日から令和11年9月30日まで 割合 50%

このほか、現在消費税の納税義務が免除されている免税事業者は、インボイスが発行できないことによる影響は小さくないと考えられ、登録を受けるかどうかの慎重な判断が求められます。

まだ来年の10月からという考えもありますが、検討すべき事項はたくさんあります。これを機に業務全体の見直しやシステムやソフトウエアの変更等も検討してはいかがでしょうか?
「インボイス制度」の対応にはIT導入補助金や小規模事業者持続化補助金が用意されています。IT導入支援事業者に相談して補助金を活用するのもよいのではと思います。

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