Column税務コラム

事業再構築補助金

 新型コロナウイルスの影響で、生活変容がうたわれるようになり、業態転換を検討する事業者も増えていることでしょう。
その際、事業再構築補助金を利用する方も多いかと思います。

事業再構築補助金とは

 独立行政法人中小企業基盤整備機構が交付するこの事業再構築補助金は、数ある補助金の中でも金額が大きい補助金です。仮にこれに対して税金が通常通り課税されるとどうでしょう。一部が税金とされてはその効果が薄れてしまい、思い切った事業の再構築に挑戦することを支援するという制度趣旨に反する結果となってしまいます。この点国税庁は、当該補助金は所得税法42条又は法人税法42条に規定する国庫補助金に該当し、本補助金のうち固定資産の取得に充てるための補助金については、圧縮記帳等の適用を認めるとしています。国庫補助金等の圧縮記帳の制度は、基本的には国又は地方公共団体からの補助金にしか認められないところ、交付元である中小企業基盤整備機構からの問い合わせに対して、当該制度の適用を認めると回答したものです。

圧縮記帳とは

 圧縮記帳とは、課税の繰り延べ制度です。交付を受けた補助金を益金として認識し、一方で固定資産の取得価額から補助金相当額を圧縮損として直接減額し損金処理(直接減額方式)することで益金と相殺され、補助金に丸々課税されることはなくなります。翌年度以降では取得価額が減額されていることで減価償却費が少なくなり見送られた課税が取り戻されていく仕組みです。上記の直接減額方式の他にも積立金方式があり、これは取得価額を減額するのではなく、補助金相当額を積立金として処理し、その積立金経理の額について損金算入が認められるものです。当該積立金は期間経過に応じて取り崩され益金算入されるので、その効果は直接減額方式と同じです。

固定資産を先行取得する場合

 補助金を受ける事業年度と、固定資産の取得の事業年度が一致している場合は話が分かりやすいのですが、これがずれている場合はどうでしょう。固定資産を直ちに取得できない場合でも、補助金について特別勘定の設定(法人税法43条)等を行い益金相当の額を繰り延べることが可能です。
また、固定資産を先行取得する場合は、条文上は明記されていないものの、先行取得された固定資産についていったん通常の減価償却を行い、補助金の交付を受けた事業年度から圧縮記帳の調整計算を行うことが認められています(法人税基本通達10-2-2)。

 なお、事業再構築補助金の益金算入時期ですが、交付額が確定した事業年度に行うものと考えられます。事業再構築補助金の流れとして、交付申請→交付決定→設備等購入→実績報告→交付額確定といった流れが一般的であるため、固定資産の先行取得による期ズレが想定されますが、上記の通達にあるようにこのケースにおいても圧縮記帳の制度の適用が可能です。

 税務上優遇された制度をきちんと適用したうえで、アフターコロナを見据えた力強い事業へと踏み出していきましょう。

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