Column税務コラム
令和元年12月12日に自由民主党・公明党の両党は令和2年度与党税制改正大綱を決定し、令和2年1月31日に税制改正法案が通常国会に提出されました。4月より新しい税制がスタートする見込みです。なお、昨年度(平成31年度)は、下記の日程で税制改正が行われました。
・平成30年12月14日 与党税制改正大綱決定
・平成31年2月5日 「所得税法等の一部を改正する法律案」が国会に提出
・平成31年3月27日 「所得税法等の一部を改正する法律」が国会で可決・成立
令和2年度税制改正案の主な内容(主なもののみ抜粋)
所得税関係
項目 | 改正の概要 |
NISA制度の延長・見直し | 「一般NISA」について、1階を積立て投資、2階を一般投資とする2階建ての「新NISA(仮称)」に見直し |
エンジェル税制の見直し | ・対象に設立後3年以上5年未満の試験研究ベンチャー企業を追加
・認定クラウドファンディング業者の証明による手続き簡略化 |
寡婦(夫)控除の見直し | ・未婚のひとり親についても寡婦(夫)控除適用(事実婚は対象外)
・寡婦に寡夫と同じ所得制限(所得500万円以下)を設ける |
国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例 | 国外不動産所得で損失がある場合、その損失の金額のうち一定の国外中古建物の償却費に相当する部分はなかったものとする |
低未利用土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特例 | 所有期間5年超の都市計画区域内の低未利用土地等の譲渡(譲渡価額500万円以下に限る)について、100万円特別控除を創設 |
法人税関係
項目 | 改正の概要 |
オープンイノベーション税制 | 一定のベンチャー企業に対する出資について、その出資額の25%相当額の所得控除ができる措置を創設 |
5G導入促進税制の創設 | 超高速・大容量通信実現のための①全国5G基地局、②ローカル5G(企業が地域や建物を限定して独自に無線通信等を展開)に対する一定の投資について、特別償却(30%)又は税額控除(15%)ができる措置を創設 |
大企業の税額控除規定の要件見直し | 大企業の研究開発税制等、賃上げ投資促進税制に係る適用要件のうち、国内設備投資要件をより厳しく見直し |
連結納税制度見直し | 現行制度に変えて、グループ通算制度に移行(令和4年4月以降) |
中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入特例 | 適用対象から①連結納税制度適用事業者、②従業員500人超の法人、を除外 |
消費税関係
項目 | 改正の概要 |
法人の消費税の確定申告期限の延長特例の創設 | 法人税の申告期限の延長の特例の適用を受ける法人については、消費税の申告期限を1か月延長する特例を創設 |
居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除の制限 | 居住用賃貸建物の取得に係る課税仕入れは、原則として仕入税額控除の適用を不可とする。ただし、その建物取得の課税期間開始後3年以内に住宅以外の貸付けや譲渡をした場合、仕入税額控除の調整を行う(令和2年10月以降の課税仕入(令和2年3月末までの契約を除く)より適用) |
国際課税関係
項目 | 改正の概要 |
子会社配当と株式譲渡を組み合わせた租税回避への対応 | 子会社(一定の内国法人を除く)から受ける一定の対象配当金額が株式の帳簿価額の10%相当額を超える場合、その対象配当金額のうち益金不算入額相当額を、その株式の帳簿価額から減額 |
納税環境整備関係
項目 | 改正の概要 |
国外財産調書制度の開示強化 | ・国外財産調書の提出がない場合の過少申告加算税の加重措置の適用対象に、相続税の修正申告等を加える(改正前は所得税のみ)
・所得税・相続税の税務調査で国外財産にかかる資料を期限内に提出しない場合の加重措置の特例を創設 |
電子帳簿保存制度の見直し | 電子取引を行った場合の帳簿書類保存について、従来の①受領者側でタイムスタンプ付与、②事務処理規定作成、のほか次の方法も追加
・発行者がタイムスタンプ付与した電磁的記録を保存 ・受領者が自由に改変できないシステム(クラウドサービス等)の利用など |
利子税・還付加算金等の割合の引き下げ | 現行の「貸出約定平均金利+1%」を「貸出約定平均金利+0.5%」へ引き下げ |
令和2年度税制改正での留意点
「国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例」、「居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除の制限」、「子会社配当と子会社株式譲渡を組み合わせた租税回避への対応」といった租税回避への対応を目的とした改正が予定されています。ただし、必ずしも租税回避を目的としていない場合についても、改正による影響を受けることがありうるため、要件や適用時期について注意が必要です。